IMFのデータによると、米国経済は世界経済の約24%(2019年)を占める世界最大の市場です(IMFデータはコチラ)
BISのデータによると、通貨の取引量では、米国のドルは約88%(2019年)と圧倒的なシェアを誇っています(BISデータはコチラ)。
ようは、世界の通貨取引の9割はドルとどこかの通貨で行われているということです(基軸通貨と呼ばれる所以です)。
つまり米国の経済をみるということは、世界の経済を見る上で最も大事です。
また、米国の経済・市場の動きを見れば、誤解を恐れずに言えば、世界の市場の動きもだいたいわかるということです。
たとえばドル円相場の先行きを読む際には、正直ドルの動きが読めれば大体わかります(日本の動きはほとんど影響しません・・)。
また米国は経済の実態を知る上で、ほんとうに多くの統計がそろっています(日本の経済統計は米国を参考に作られているところが多々あります)。
最初はどの指標を評価したらよいか戸惑う方も多いですが、重要な指標の見方(特に市場が動くもの)を中心にいくつか紹介していきます。
運用のなかでも、特に米国ファンドやFXをやりたい方にとってはベーシックな知識ですので、ぜひぜひ理解しておきましょう!
目次
GDP(国内総生産)は包括的な指標。前期比年率2%弱より高いか低いかが一つの目安
経済指標でもっともよくマスコミで話題に出る指標がGDP(国内総生産)です。
これは消費や投資、輸出など様々な指標を合成して作られていて、その国の経済の現状を知るのにもっとも包括的なものです。
問題はすべての指標が出そろってから発表されるので、公表が遅いことですね。正直に言えば、GDPが発表される時点ではマーケットは大きくは反応しないことが多いです(雇用統計などの方が注目されがち)。
ただ、米国の現状を知る上では重要ですし、サプライズ(各エコノミストや市場の予想より上振れ、下振れ)が起きた時はマーケットにも大きな影響を及ぼします。
発表は実は速報値(4-6月期は7月末)、暫定値(8月末)、確定値(9月末)ということで3回発表されます。
注目されるのはやっぱり速報値ですね。
GDP自体はBEA(Bureau of Economic Analysis)が発表しています(コチラ)。
まずヘッドライン(最も注目される数値)はやっぱりGDPです。経済速報でニュースで流れるやつですね。
コチラを見るときには目安がありまして、答えを言ってしまうと、だいたい前期比年率で2%弱を上回っていれば景気がよさそう、それより悪ければ景気は悪そうということです(目安は大事です!)。
なんでかといいますと、少し専門的になりますが米国の実力ベースの成長率を示す潜在成長率(供給サイドの成長率)が2%弱といわれているからです。それを超えれば実力よりも景気がいい!下回れば実力よりも景気がわるい!となるわけです。
本記事を記載している時点(2020/6/9時点)だと、2020年1-3月期の数値まで発表されていますが、コロナウイルスの影響でGDPは▲5.0%とリーマンショック以来のマイナスになっています。
いかにその影響が大きかったかを物語っています。
ただヘッドラインはあくまで目安ですので、本当に悪いのか、何がわるいのかを見極めるには内訳をみる必要があります。
またマーケット参加者であれば、事前に予測値が出ています。例えば20年1-3月期の速報値は▲3.9%だったので、予想より悪い結果です。
そうすると、どちらかといえば米株安、ドル安の方向に働くとみるわけです(影響しない場合も多々ありますが)。
GDPは内訳の評価が本当は重要(消費は?投資は?輸出は?)
これまではあくまで、ヘッドラインの評価ですが、実際にはGDPを注意深く読み解いていく必要があります。
GDPは先ほど触れたように、個人消費、設備投資、輸出など(実際には住宅投資や輸入、政府支出、在庫投資などもあります)を統合したものです。
なので、各項目(需要項目といわれます)がどうだったかを見ていくことが重要です。2020年1~3月期のデータで評価していきましょう。
まず個人消費ですが、前期比年率▲6.8%と大幅減です。コロナの影響はやはり大きいですね。
内訳をみると、自動車などの耐久財が同▲13.2%、食品、医薬品などの非耐久財が同+7.7%、サービスが同▲9.7%です。
コロナ影響で外食→内食(家でごはん)にシフトしたり、マスクが売れた非耐久財は消費増えていますね!
ポイントはこれが続くかどうかですが、個人的にはwithコロナでは儲かっても、afterコロナでは徐々に正常化していくのかなとは思います。同分野の株価上昇はそろそろ一旦手じまいではないでしょうか。
次に設備投資ですが、前期比年率▲7.9%とこちらも悪いですね。
内訳をみると(建設投資や機械投資はマイナスな一方、IT投資やR&Dなどの知的財産投資は同+1.0%です。コロナでIT投資はむしろ増えていますね。
IT系の株価上昇はもっともな結果ですが、それにしては伸びは強くないかもしれません(やや期待が強まりすぎかもしれません)。
輸出は▲8.7%でした。自動車などの財よりも、インバウンドなどのサービス輸出の悪化が特に顕著です。
航空会社は本当に厳しいですね・・・。
以上のように各需要項目の内訳をみていくと、産業別にどこがやられたかが見えてきます。
そして株価はすでにそれを織り込んでいるわけです。
ただ、実際には「織り込みすぎ」、あるいは「織り込みが足りない(予想外に経済が良い)」ことはあるので、そのあたりが市場参加者は注目してます。
直近の動きがわかるGDPナウ(日次GDP)も注目
以上がGDPについてですが、やっぱりネックはGDPが公表されるまで1カ月近くかかることです。
実はアトランタ連銀がGDPナウというものを発表していて、エコノミストはちょくちょく見ています。
これは米国のアトランタ連銀というところが、日次で出てくる経済指標を踏まえて、GDPがどうなりそうかのの予測値をほぼ毎日(指標があるときは)更新しています(GDPナウはコチラ)
例えば本記事を書いている2020年6月9日時点だと、2020年4~6月期GDPを出していて前期比年率で▲53.8%となっています。
ちなみに現時点でのエコノミスト平均は大体前期比年率▲30%前半です。
リーマンショックでも見たことがない数値です。コロナやばいですね・・・。
この時点でダウ平均はすでに結構株価を戻していますが、この4~6月期のGDPが公表される7月末に将来を見続けられるかはやや不安です。企業も倒産が増えてくるでしょうし・・・。
ただアトランタ連銀は結構外すこともある(その時点までの数値を使って予測するので、これから出てくる数値を織り込み切れていない)ので、参考程度にして、市場参加者の数値と見比べましょう。