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日本:法人企業統計で日本の企業収益の実態を知ろう

日本全体の企業収益を知るには、財務省「法人企業統計」が有効です

経済の視点では、収益は景気の好循環を促す重要なファクターです。収益が改善してくると、企業も雇用や賃金、投資を増やしていこうという風になります。またそれがさらに収益の改善に繋がるといった流れです。

経済を予測する上でも、収益の動きで投資や雇用の先行きも見えてくる部分があります。

また、企業収益の動きを知ると、①株価の水準はどうか?、②現在の収益水準は過去と比べて強いか、③収益の変動幅はどれぐらいかがつかめます

それでは法人企業統計の内容と評価の方法をみていきましょう。

目次

まずは「年報」で全体観をつかむ

法人企業統計は企業の決算データを合計したものなので、収益などのいわゆる損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の両方がわかります。

その点では法人企業統計は日本全体の収益構造、資産・負債の状況などがわかる非常に貴重な統計です。

まずは全体観をつかむうえでは、収益を見ることが大切です。法人企業統計年報で、日本の営業利益の動きをチェックしてみましょう。

データは1960~2018年度のデータです。特徴を見ていきましょう。

1点目の特徴として、2018年度は約68兆円と過去最高水準になっています。利益が2010年頃から概ね回復が続いてきたことがうかがえます。

また2点目の特徴として、長期でみると、非製造業の比率が高まっています。言い換えると非製造業の動き次第で利益は大きく振れるということです。

3点目は利益の振れ幅の大きさです。2008~2009年ごろはリーマンショックの影響で日本の企業収益も大幅に落ち込みました。

2008年度は前年度比▲41%となっており、特に製造業が▲69%と大幅減になりました。非製造業は▲19%と相対的には小さいですが、それでも過去最高の落ち幅になっています。

企業収益はリーマンショック以外にも景気後退局面において、大幅な減少を何度か繰り返してきました。

2020年4月執筆時点ではコロナの影響が懸念されていますが、おそらくコロナにより2020年度の企業収益は大幅に下振れるでしょう。

特に今回は製造業はもちろん、非製造業にも影響が大きいことからリーマンショックを超えるマイナス幅になる可能性があります

その点を株価が織り込み切れているのか、というのが大きな注目点でしょう。

以上が年報ですが、どうしても公表が遅いので、実際のアナリストは「四半期」データを確認しています。こちらも見ていきましょう。

「季報」で足元の動きをつかむ

では実際に四半期ではどのような動きをしているでしょうか。四半期のデータをとってみましょう。

ただ、四半期で見るときの留意点があります。四半期データは、単純に集計した「原数値」と、季節性の影響を除いた「季節調整値」があります

季節性というのが何かというと、例えば米国だとクリスマスに売上が急増するのですが、その12月と他の月だと売上も利益も違ってきます。また2月はほかの月と比べて日数が少ないので、その分売上が減ってしまう傾向があります。

なので、現在と他の月をくらべたい場合は季節調整(季節性を調整)してあげる必要があります。四半期でも同様で、前の期と比べる場合は「季節調整値」を使いましょう。前の年の同じ期と比べる場合は「原数値」でOKです。

さて、ここでは「季節調整値」で2007年以降の営業利益の動きを確認してみましょう。

確かに利益は増えているのですが、気になるのは2018年後半から製造業がやや下がってきていることです。

これは世界的な自動車需要の低迷やIT需要の減速が影響しています。

2020年4月執筆時点では反映されていませんが、コロナウイルスの影響は非製造業で特にこれからてきますので、営業利益は2020年に入ると悪化していくことが予想されます。

収益の動きから株価の適正水準を考える

こうした利益の変化は株価に反映されるため、資産運用上の観点でも重要です。では利益変化を踏まえた株価の適正水準をどう考えるべきでしょうか?

株価の適正水準は何かと聞かれると、よくPER(株価収益率)で示されることが多いです。ここでいうPERは以下で計算ができます。

PER=(時価総額)÷(予想純利益)

もしくは

PER=(株価)÷(一株当たり予想利益)

ポイントはPERの計算は「現実利益」ではなく「予想利益」でされることです。現在の収益水準を踏まえた予想収益がどうなるかで株価が決まってくるということです。

では実際のPERはどれぐらいでしょうか。例えば日経平均株価のPERは2020年1月1日で19倍、4月1日現在で15倍程度となっています。

まだ2020年度の予想利益は2020年4月1日現在ではまだほとんどの企業で発表されていませんので、時価総額が下がったことで20%近くPERが下がったと考えられます。投資家は20%減程度の利益減を織り込んだとみることができます。

5月頃から各社の決算発表が予想されてくると、今度は分母の予想収益が下方修正されます。そうすると今度は株価が上がらなければPERは上昇します。

上場企業の当期純利益と、日本全体の営業利益では動きが異なる部分もありますが、その点をのぞいてみれば、リーマンショック並の利益減であれば40%近い減少になることは十分に予想されます。

単純に考えるとPERは20倍以上に上がってしまうわけです。そうすると割高感が出て、株価は再び調整される可能性があります。私自身は20倍以上のPERはやや高すぎるとは見ていますが、調整するかどうかは、日本の投資家が将来をどう考えるか次第です。

以上のように利益の水準や動きをつかんでおくことで、株価の水準も目安を持つことができると思います。一方であくまで株価は現在ではなく将来できまるので、一つの参考としてとらえておくことも重要です。

(参考)関連データのとり方

法人企業統計のデータは以下で取ることができます。また日経平均株価やPERは日本経済新聞の指数公式サイトで公表してくれています。

適宜活用していきましょう。

①財務省「法人企業統計調査」

https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/index.htm

②財務省「法人企業統計年報」データ

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00350600&tstat=000001047744&cycle=8&tclass1=000001049372

③財務省「法人企業統計季報」データ

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00350600&tstat=000001047744&cycle=2&tclass1=000001049372

④日経平均株価、EPSデータ

https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/archives/data

プロのアナリストも参考にしている日本の金融指標や経済指標の見方としては、以下のようなものがあります。是非参考にしてみましょう。

①金融マーケット予測ハンドブック

②経済指標の読み方

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