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景気動向指数(日本)はあまり注目されないが、ある局面でチェック要
景気動向指数は、その名前の通り「景気」の「動向」を示す指数です。名前だけ聞くと、「なんだ、これをみていれば景気の動きがわかるんじゃない!」と思いますし、実際にそのために作られた指標です。
ただし、景気動向指数は公表が非常に遅いです(4月の結果が6月にわかるといったように、大体2か月遅れで発表されます)。それはなぜかといえば、景気動向指数は、生産(鉱工業生産)や労働時間、商業販売額などの、様々な指数を合成したものだからです。
そのため普段から経済を見ているエコノミストや資産運用の専門家、市場関係者からすると、公表される前からだいたい結果はわかってしまっているので、あんまり注目されません。
ただ景気動向指数がときに注目されるのは、景気が拡大から後退に向かう時、あるいは後退から拡大に向かう時、いわゆる景気の転換点の時です。なぜなら、この景気動向指数の動きで景気が判断されるからです。
詳しく見ていきましょう。
景気動向指数には2種類、3つの系列がある
景気動向指数は生産や消費、雇用など様々なデータを組み合わせて作られた指数です。景気動向指数はCI,DIの2種類があります。
CIはコンポジット・インデックスの略で、景気の量感(どのぐらいのテンポで進むのか)を、DIはディフュージョン・インデックスの略で、景気の方向性(景気は拡大、後退のどちらに向かうのか)を示しています。
昔はDIを中心にみることが多かったです。ただDIの難点として拡大・後退の方向性はわかりますが、そのテンポまでは実は把握できないのが難点です。そこで作成されたのがCIです。 最近はCIの動きを見ながら、「これから景気はどの程度よいのかな?」「景気はこれから悪くなるのかな?」ということを判別していくわけです。
さらにCI、DIには先行指数、一致指数、遅行指数というのがあります。名前の通り、一致指数は「その時の景気はどうか?」、先行指数は「今後景気はどうなりそうか?」、遅行指数は「実際に景気はどうだったか?」を示す指数です。
そう聞くと、「それじゃ先行指数をみれば、将来がわかるじゃん」となりますが、実際にはそれほど簡単ではありません。それでは景気動向指数の見方をCIの動きから考えていきましょう。
単月だけでみても×。3か月程度変化が続くかが一つの目安
実際の景気動向指数の動きを示したグラフが下になります。折れ線グラフの青が先行指数、赤が一致指数、緑が遅行指数です。また薄い青色が景気後退していた時期になります。
2000年以降ですと、ITバブルが崩壊した00-02年、リーマンショックのあった08-09年、欧州債務危機のあった12-13年が下がっています。
まず赤色の一致指数をみてみましょう。たしかに一致指数が下がっている時に、だいたい景気後退していることがわかります。ただし一致指数は2014年頃(消費税増税)、2016年頃(中国ショック)があった時期も下がっていますが、短期間で終息したため景気後退にはなりませんでした。
次に先行指数をみてみましょう。あれ、一致指数とあまり変わらないですね・・。
そうなんです。先行指数は必ずしも確実に先行きを読めるわけでもないんですね。ただ、2009年のリーマンからの回復、2013年の欧州債務危機からの回復ではすこし一致指数より早く動いています。確実に当たるかわからないけれども、先行指数をみる価値はそれなりにありそうです。
また各指数のグラフを見ると、結構細かく波を打っています。これは単月だと一時的なブレで急に増えたり減ったりすることを示しています。景気動向指数をみるときは、「3か月同じ変化が続くか?」が一つの目安になってきます。
景気の波を早めにつかめれば、資産運用に役立つことも
景気動向指数は長い目で見ると、拡大したり、縮小したりしているわけですが、その波を早めにつかむことが資産運用の観点でも重要です。
最近3年をみると、2017年頃から先行指数が下がり始め、次に2018年末頃から一致指数が下がっています。つまり景気後退の可能性が高まってきているわけですね。日本株は2017年半ばごろから止まっていたわけですが、その背景の一つには景気後退リスクが意識されたことがあります。
コロナウイルスの影響で現時点(2019年4月現在)で株価が急落してしまったため読みにくいですが、その前から景気後退が始まっていた可能性が高いということがわかります。結果論ですが、早めに手じまいしていた人は損を回避することができた、ということになります。
また、景気の波を考えれば、どこかで反転するはずです。今度は景気回復のタイミングを景気動向指数で見ながら、日本株を購入するタイミングをうかがう、ということが大事です。
景気後退が実際に決まるのはだいぶ先。兆しをチェックすることが重要
景気動向指数の見方に触れてきましたが、最後に景気後退あるいは拡大は誰が決めるのでしょうか。それは内閣府が決めています。
どうきめるかといいますと、DI一致指数をベースに作られる「ヒストリカルDI」というもので事後的に決められます。というのもヒストリカルDIは1年以上の移動平均をとっているので、景気後退が始まってから1年半ぐらいたたないと決まらないのです。
具体的なフローは、専門家からなる景気動向指数研究会での議論を踏まえ、内閣府経済社会総合研究所長が設定することになっています。
ただ、1年半も待っているとだいぶ昔の話になってしまいます。重要なのは、景気動向指数をたまにチェックして、景気回復、あるいは景気後退の兆しがないかを見て、長い目で見た投資判断をしていくことが大事です。